森林の整備は人でいうところのスキンケア!? お手入れをしないと、どんどん荒れてしまいます

-はじめまして 今日はよろしくお願いいたします  

ノキ はじめまして。津久井の森在住の樹木・津久井ノキと申します。樹齢36年です。こうやって人間の方とお話するのは初めてのことですので、お手柔らかにお願いします。

—こちらこそです! 早速ですが、今回なぜこのようなインタビューにお応えいただけたのでしょうか?

ノキ かつては、毎日のようにこの津久井の森に人がいらっしゃっていました。私たち津久井の木々が心地よく暮らせるようにしてくださっていたのです。ご存知かもしれませんが、私たちは太陽の光を浴び、雨から水を授かることで、生を全うすることができます。動くことのできない私たちのために、枝を落とし、適切に陽と水が当たるようなお手入れ…人の言葉でいうところの枝打ちや間伐でしょうか。こうしたことをしてくださっていました。よく“津久井の木は美しいね”と隣の森の木のみなさんに言われたものです。

以前に比べると森へとやってくる方々が減り、人のみなさんと交流も少なくなってしまいました。このような機会をいただき、少しでも津久井の森のことを知っていただければと思っていました。そこで、このあいだ、森にいらっしゃっていた「さがみはら津久井産材利用拡大協議会」さんを通じてお受けさせていただいた次第です。

—ご丁寧にありがとうございます。そうでしたか…。お話の中で“お手入れ”という言葉が出てきましたが、枝打ちや間伐は木のみなさんにとって有り難いことなのでしょうか?

ノキ そうですね。残念ながら私たちは自分で枝をはらったり、移動したりすることができません。そのため、陽が当たらないまま朽ちてしまったり、朽ちた木を避けられなかったりと、森トラブルが度々起こるのです。そうすると、いずれ森ごと朽ちてしまうことにもつながります。

—なるほど。人でいうところの肌トラブルのようなものですね。

ノキ しかしながら、やり過ぎると今度は木に栄養が行き届かなくなったりします。このバランスをしっかりと見定めながら森トラブルを防いでくださっているのが人のみなさんによるお手入れなのです。

 —ぐお。まさにスキンケアと同じようなもの…。最近はこうしたお手入れをする人が減った、と?

 

ノキ ええ、樹齢で100年ほどのあいだでしょうか。人の手によって多くの木々が植えられ、育てられていた時期もありましたが、お手入れをする人々が減ったために、お互いの枝が邪魔し合ったり、木々が密集して息苦しくなったりした時期が続いたのです。

 

—ぐむ。人にとって満員電車が息苦しいように、木のみなさんも密集してしまうと息苦しくなるのですね。

ノキ 私たちも太陽の光を浴びることで呼吸をしているんです。木々が増えすぎると、今度は自分たちが息苦しくなり、その状態が続くとやがて木々は朽ちてしまうのです。

—ぐぅ。森も人も酸欠状態…!

ノキ 木々が朽ちると、今度は根が朽ち大地を弱めてしまう、というような状況も起こります。大地が弱まると地面に含まれている水分のバランスが崩れます。こうした時に、たくさんの雨を浴びると、地面が崩れ多くの木たちが倒れることになります。

—土砂崩れや森林被害につながってしまうのですね。

ノキ (枝をざわざわさせながら)土砂崩れ…なんて恐ろしい言葉でしょう。土砂が崩れるというのは、森に暮らす私たちにとってもたいへんな恐怖です。

—そうならないためにも、森の整備がとても大切なんだということが伝わってきました。

 

人と森が共存するために

地産材の利用はウィンウィン!?

—ここ最近の津久井の森のご様子をお聞かせください。

ノキ ちょうど今朝、森の木のみなさんと、「最近はお手入れをしてくださる方が増えたね」と話をしていたんです。樹齢とともに木は弱まり朽ちていくのですが、弱まる前に切っていただいているので、心地よく過ごせています。

—それは良かったです ! 

ノキ 私たち木だけではなく、太陽、雨、そして森に暮らす生き物たちと森を支える大地…。こうしたみなさんとの関係性があって、初めて森は命を輝かせることができますので、木の事を考えるときには、森の事、太陽のこと、雨水のことなどにも気持ちを巡らせていただけたら嬉しいです。

—私たち人には“木を見て森を見ず”という言葉があるのですが、森をよくよく見ることで自然環境を感じることができるのだな、とつくづく感じます。

ノキ 私たちも“人を見て町を見ず”ではなく、町をよく見て自然環境を感じたいと思います。

—(笑)その町では津久井の森で間伐された木材を使用した住居も人気です。森の木で人が暮らす家を建てられることに抵抗はないですか?

ノキ 朽ちた木が森に残り続けるのは、木にとっても森にとっても良くないことですので、木が弱まる前に切って利用していただけるのはとても嬉しいことです。

—私たちの間では、家を建てる場合は地産材…つまり地元の木をその地域で使用することが推奨されているのですが、そのあたりはいかがでしょうか?

ノキ 住居の材料として使っていただくなら、それに越したことはありません。私たちはこの森で育ち、数十年という時間をかけて樹齢を終えます。そのため、この地域の環境に合う呼吸や暮らし方をしています。切られた後に、今の環境よりも寒いからといって木の皮を厚くしたり、暑いからといって呼吸法を変えたりすることはできません。あまりに環境が変わってしまうと、縮んだり膨張したりして、きっと曲がったり割れたりすることでしょう。森となるだけ同じ環境の地域で利用していただいたほうが、長く美しくその姿を保てるのではないでしょうか。


—確かに! 地産材を用いて建造された寺社仏閣には、何百年も朽ちることないものも少なくないですね。


ノキ また気候が育った地域とあまりにも変化すると、息苦しく感じる時があるのです。私たちが息苦しいと感じるときは、人のみなさんもやはり息苦しいのではないでしょうか?

—酸素と二酸化炭素のバランスが崩れるということですもんね…。やはり、木にとっても人にとっても地産材を利用することがウィンウィンなことなのでしょうね。


ノキ ウィンウィン(真顔)?


—どちらにとっても好都合ということです。 



ノキ とてもすてきなことですね。

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